札幌におけるJR線は、乗車人員ベースで地下鉄・バスに次ぐ第3の公共交通機関である(第4は市電)。
<1日平均乗車人員・2016年>
1.地下鉄:619,945人
2.バス:289,818人
3.JR:218,894人
4.市電:24,871人
>出典元データ:札幌市ホームページ
JR北海道は、利用者数が少ないだけでなく、遅延・運休が多く、過去に何度となく事故も起こしている。そんなJR北海道だが、よく見ると、今後に期待できそうな部分もある。また、地下鉄ほど多くはないが特徴もあり、いろんな角度からまとめてみた。
路線・本数・始発・終電
札幌駅を中心に①新札幌・新千歳空港方面、②手稲・小樽方面、③江別・岩見沢方面・④あいの里公園・石狩当別方面の4方向に路線があるが、それぞれの方面駅により列車本数・利便性が大きく異なる。
❹石狩当別 岩見沢❸
・・・↑ ↗
❷小樽←札幌→新千歳空港❶
◆列車本数(特急を除く)
❶新札幌・北広島・新千歳空港方面…1時間に3~8本(時間帯で異なる)
❷琴似・手稲・小樽方面…1時間に2~11本(時間帯で異なる)
❸江別・岩見沢方面…1時間に3~6本(時間帯で異なる)
❹あいの里公園・石狩当別方面・・1時間に2~4本(時間帯で異なる)
◆始発・終電(札幌駅発・特急を除く・2018年5月の平日)
❶千歳方面・・・・・6:02(始発)~23:59(終電)
❷手稲方面・・・・・6:08(始発)~23:59(終電)
❸江別方面・・・・・6:00(始発)~23:59(終電)
❹あいの里方面・・・6:21(始発)~23:59(終電)
◆所要時間
小樽~札幌・・・32分~46分(快速エアポート・区間快速・普通)
手稲~札幌・・・10分~18分(快速エアポート・区間快速・普通)
石狩当別~札幌・・37分~44分(普通のみ)
新札幌~札幌・・・9分~17分(快速エアポート・普通)
新千歳空港~札幌・・37分~57分(快速エアポート・普通)
岩見沢~札幌・・・44分~50分(区間快速・普通)※特急利用で25分
JR線・札幌市内の「駅別」乗車人員から見えるもの
◆2016年・1日平均の乗車人員と10年間比較
>10年間比較は2016年/2006年
>データ出典元:札幌市ホームページ
利用者数が多い駅=利便性の高いエリア、10年間比が大きく伸びている駅=ここ数年発展し注目されてきたエリア、そんな大よその目安になるであろうと、札幌市ホームページの乗車人員データと、こちらでの計算により10年間比を割り出した。
駅名 乗車人員 10年比
ほしみ 1,080 129%
星置 6,276 98%
稲 穂 860 127%
手稲 15,589 110%
稲積公園 4,801 99%
発寒 4,548 139%
発寒中央 4,217 115%
琴似 11,677 108%
桑園 10,295 120%
札幌 97,652 115%
苗穂 4,227 134%
白石 8,077 127%
厚別 3,300 117%
森林公園 4,209 115%
平和 2,710 113%
新札幌 14,267 107%
上野幌 2,839 129%
八軒 2,314 124%
新川 3,253 112%
新琴似 3,968 123%
太 平 861 135%
百合が原 779 127%
篠路 3,104 141%
拓北 2,505 113%
あいの里教育大 3,769 109%
あいの里公園 1,717 139%
合計 218,894 115%
全体的には、この10年間で115%と大きく増加している。札幌で一番の地下鉄と比較すると、乗車人員合計でこそ地下鉄619,945人の1/3程度と少ないが、10年間比では地下鉄108%より大きく伸びている。
JR札幌駅にJRタワーができ、札幌商業の中心地が地下鉄大通駅近辺から、JR札幌駅近辺に移ったことが大きな要因であろう。もちろん、JR札幌駅から地下鉄にも南北線・東豊線2つの地下鉄「さっぽろ」駅と直結している利便性もある。
また、リクルート住まいカンパニーが調査 した「SUUMO住みたい街ランキング2 018 札幌版」でも「さっぽろ」駅が2年連続でトップである。2位:円山公園、3位:大通、4位:琴似、5位:麻生。
上位はほぼ地下鉄の駅が占めている。琴似と同様に地下鉄と複線利用が可能な新札幌は6位、JR単独駅で上位に入ったのは、8位:桑園のみである。依然として住みたい街は地下鉄沿線であり、JR沿線は、利用者数が増えてはいるが、人気はまだまだ少ない。
◆乗車人員上位10駅
駅名 乗車人員 10年比
札幌 97,652 115%
手稲 15,589 110%
新札幌 14,267 107%
琴似 11,677 108%
桑園 10,295 120%
白石 8,077 127%
星置 6,276 98%
稲積公園 4,801 99%
発寒 4,548 139%
苗穂 4,227 134%
地下鉄3線の10年間比では、南北線98%、東西線113%、東豊線117%と、開業が早く=早くから発展をしていた南北線(1971年開業)より後発の東西線(1976年)、更に後発の東豊線(1988年)の方が、伸び率が高かった。
JR線でも同様のことが言え、新札幌駅と琴似駅はJR線と地下鉄線の複線利用ができる便の良い地域であるため、早くから発展してきたが、この10年間では他のJR駅より伸び率が低い。
もちろん、分母が大きいことの影響は大きい、しかし一番分母の大きい札幌は高い伸び率である。
札幌駅から西に1駅の桑園駅は、この十数年かなりのマンション建設が進み、大きく伸び乗車人員数で5位になっている。
それに対し、逆の東に1駅の苗穂駅は、伸び率こそ134%と大きいが、乗車人員が桑園の半分以下・約4割しかない。しかし、今後一番注目される駅になる。そこも含めて直近10年間比も伸びていると予想されるが、その注目される理由については後段で記す。
ちなみに、札幌市以外を含む札幌近郊にまで広げると(乗車人員上位10駅)、札幌・新千歳空港・手稲・新札幌・琴似・桑園・小樽・千歳・白石・北広島の順。
地下鉄との比較
◆乗車人員で比べてみた
札幌市内各駅の合計乗車人員(2016年・1日平均)では、地下鉄:619,945人に対しJR:218,894人と、3倍ほどの差がある。冬にはホームで待つのも寒い、運休や遅延も多くなるなど、地下鉄に比べJRは劣勢にある。
しかし、もう少し乗車人員の比較をしてみると、JRもがんばっていることが分かる。
2016年対2006年の10年間比較では、地下鉄の108%に対し、JRは115%と、増加率が大きく上回っている。
地下鉄・JRの複線利用可能駅での乗車人員(2016年・1日平均)比較では、
●地下鉄さっぽろ駅87,575人に対し、JR札幌駅は97,652人
●地下鉄新さっぽろ駅20,336人に対し、JR新札幌駅は14,267人
●地下鉄琴似駅13,470人に対し、JR琴似駅は11,677人
同じ駅同士で比較してみると、けっこう拮抗しているように見える(単純比較はできないが)。
◆ICカードを比べてみた(SAPICA・Kitaca)
札幌近郊で使える交通系ICカードとして、SAPICA(サピカ)とKitaca(キタカ)がある。元々は地下鉄・バス系のSAPICAとJR系のKitacaであったが、今は共通化された部分などもあるため、簡単に整理してみた。
・SAPICA
利用範囲:地下鉄・市電・バス(一部札幌市郊外も含む)+特定店舗
特典:地下鉄・市電・バスをSAPICAで支払うと、運賃の10%がポイント化、他
・Kitara
利用範囲:JR北海道のICが使える55駅+特定店舗
相互利用可能:SAPICAエリア・東京・東海地方・関西・九州などでも利用可能
交通利用重視ならJR・地下鉄・市電・バス・道外でも利用できるKitaraが良く、特典重視&札幌周辺のみ利用ならSAPICAが良い。
両方を持って使い分けるのも有りだが、1つ注意が必要。SAPICAと Kitacaの両カードを同じ定期入れなどに入れたまま、地下鉄・市電・バスのICカード読取機に通すと、エラーが発生する。この場合、駅の窓口で操作をしてもらう面倒が生じる。
北海道でのJR線・車体の特徴
札幌市営地下鉄に比べ、それほどメリットがある訳ではないが、札幌(北海道)ならではの特徴や地下鉄との違いも含め、いくつか移住を面等されている方に役立つ情報をご紹介する。
❶遅延・運休が多い
北海道では、遅延や運休に出会ってしまうことが多い。特に困るのは、新千歳空港へ行く快速エアポートでもよく遅延が発生することで、予約航空便出発時刻より1時間くらい前には到着予定の列車に乗る方が無難である。
データ的にも、2006年度~2011年度に起きた運休や30分以上の遅延の件数(そのうちJRが原因で発生した件数)において、JR北海道は他JR5社平均の約2倍もあったとのこと。
❷北海道の全路線が赤字
JR北海道は、政策的な補填が無ければ毎年赤字になってしまう環境で、その理由の大きな1つに、札幌一極集中化によって運賃単価が高い長距離列車の利用が少ないことがあげられている。
しかし、なんと札幌近郊を含めた全路線において赤字。しかも、2014年度~2017年度の4年連続。
ちなみに、2017年度のJR北海道全体の経常赤字額は227億円。そのうち、北海道新幹線だけで103億円も赤字がある。2018年度の想定も102億円の赤字と、料金申請当初にJRが出した試算の47億円(赤字)の2倍以上にもなっている。
❸全列車にトイレ設置
JR北海道では、毎日運行の普通列車・特急列車・北海道新幹線・季節運行列車等、全ての列車にトイレが設置されている。さすが長距離走る北海道である。
❹冷房設備がある
地下鉄には冷房設備がないが、JR車両にはある。冷房使用時は概ね26℃前後、暖房使用時は概ね21℃を保つよう設定されているそう。だからと言って、JRと地下鉄で夏の車内温度に差や違和感を覚えることもあまりないが・・・
JR北海道の苦しい状況
政策的補填が無ければ毎年赤字の会社であることは先ほども記したが、その経営基盤が弱い理由は、札幌一極集中化によって運賃単価が高い長距離列車の利用が少ないことの他にも、人口希薄地帯が多い、豪雪・寒冷の厳しい北海道では列車や駅舎などの維持管理費が膨大であることなどが大きいとされている。
2016年11月にJR北海道が記者会見をした内容によると、当時営業していた2,500kmほどのうち、約半分の1,236kmは、JR北海道だけでは維持することが難しいとのことであった。
確かに、2016年度に廃止された留萌本線留萌~増毛間の各駅は、大半の駅が1日の平均乗車人員がたったの10人にも満たない厳しい状態であった。
しかし、先ほど一極集中の札幌近郊路線ですら赤字であると記したが、札幌一極集中化・人口希薄地帯・豪雪寒冷など北海道独特の営業環境だけが問題なのであろうか?
2011年5月に特急スーパーおおぞらの脱線火災事故をはじめ、最近でも2015年4月の青函トンネル内特急スーパー白鳥・床下から煙が発生事故など、事故が多発している。
また、2011年度に実施した車両検査で検査項目未実施部分があることや、違法残業などが発覚、組織的な問題もあった。
更には、運転士の居眠り・運転士の覚醒剤使用など、従業員のモラルに関する問題もあった。
北海道の営業環境だけが問題なのではなく、経営状況の悪さ・組織的問題・事故発生・社員のモラル・・・全ては連鎖し、負のスパイラル状態に陥っていると想定できる。
最近は、首都圏でも鉄道に関する良くないニュースが多いので、JR北海道だけが最悪という訳でもないのであろうが、JR北海道の自助努力と周りとの協力体制の両面から頑張ってほしいものである。
札幌が、北海道が住みやすい街として存続するために、JR北海道は重要な存在であるのだから。
JR北海道の明るい材料
赤字続きで乗車人員の少ないJR北海道であるが、札幌から一歩外へ出る時、旭川や函館など北海道内の地方都市への出張や、富良野・ニセコなどリゾートへの旅行、また東京や大阪への帰省・出張の際に、JR線は欠かせない公共交通機関である。
このまま沈んでもらっては困る存在だが、暗い話ばかりでもない。JR札幌駅の賑わいや苗穂駅の移転による活性化、2030年には北海道新幹線が札幌まで延伸するなど。この辺りを少し調べてみた。
❶JR札幌駅
少し前まで、札幌のビジネス・ショッピング・飲食等商業的要素の中心地は、札幌駅周辺ではなく、大通公園の真下に位置し、地下鉄3路線全てが通っている大通駅の周辺であった。
地方都市では、JR駅より10分~20分離れたエリアが、商業の中心地であることはよくあること。
しかし、この十数年で、JR札幌駅が交通の中心地としてだけでなく、ショッピングや飲食などにおいても、札幌の一番地となった。
JRタワーにアピア・エスタ・パセオ・ステラプレイスの4つのショッピングセンターと、大丸札幌店・JRタワーホテル日航札幌などが駅に直結していて、JR札幌駅の付加価値を大きく押し上げている。
ちなみに、
・若者たちを中心に、JR札幌駅は「サツエキ」と呼ばれている。
・JRの駅は「札幌」、地下鉄の駅は「さっぽろ」とJRは漢字、地下鉄はひらがな(ちなみに、新札幌もJRは「新札幌」で地下鉄は「新さっぽろ」、琴似はJRも地下鉄も同じ「琴似」)
❷北海道新幹線の札幌駅延伸、新設ホームの位置が決定
2030年に札幌駅まで延伸予定であることは以前からの決定事項であるが、この3月に新幹線のホームをどこに造るのかが決定した。現在の札幌駅の地下に造る案や現在のホームを活用する2案で2年くらい議論されていたが、急に復活した案であっけなく決まった。
議論対象の2案を受け入れられないJR北海道が、現在ホームよりも東側・創成川通りを跨ぐ位置にホームを造る案を、以前に札幌市より反対され却下となっていたが、自己負担も含め再度提案し、国や北海道庁・札幌市とも折り合いが着いた。
このことにより、札幌駅の東側エリアが、今後発展していくことになりそうだ。
❸苗穂駅の移転に伴う周辺の活性化
上が現在の苗穂駅(南口)と改札 下が駅に貼り出された移転に関するご案内
札幌駅から東に1つ目の駅である「苗穂駅」が、現在の位置より300mほど札幌駅側(西方向に)に移転する。
その新「苗穂駅」駅舎が、本年(2018年)11月17日に開業することが、昨日決まった。
この移転は、ただ単に位置がずれるだけでなく、大きな意味を3つ持つ。
➀苗穂駅の南北が通れるようになる。
現在の苗穂駅は南口しかないため、北側の住民は南口を出た後300mほど歩いた先の歩道橋を渡って北側に抜ける必要があった。
また、南側の住民は、札幌では1・2を争うスーパー併設型のショッピングセンターである「アリオ札幌」へ買い物に行くのに、同じようなルートで大回りし12分ほどかかっていた。
新苗穂駅では、南北両方に出入り口ができ、南北を自由に通行できるようになる。また、北口からアリオ札幌まで直通の空中歩廊も造られるため、南口からアリオまでの距離が12分から3分ほどに短縮し便利になる。
②苗穂駅の南口・北口ともに大規模な再開発が行われる
南口には、25階建てツインタワーマンションや医療・商業施設が、2018年度・2020年度の2度に分けて竣工する予定。
北口には、28階建てタワーマンションやサービス付き高齢者住宅・商業施設などが2020年度予定で建てられる予定。
苗穂駅の目の前には、一気に3つもタワーマンションが立ち並ぶことになる。アリオ札幌も更に活気づき、新しい商業施設や医療施設・高齢者住宅ができるだけでなく、その勢いに乗じようと、更に別の何かが進出して来るかもしれない。
❹「創成川イースト」エリアがますます注目!
北海道新幹線のホームが東側になることや苗穂駅が大規模開発されることで、ここ十数年の創成川イーストの発展・注目が、更に拍車をかけることになりそう。
札幌駅と苗穂駅の中間に位置するサッポロファクトリーの隣にも、ツインタワーの建設や中央体育館の移転・スポーツ医療施設の新設など、大規模な開発が進行中で、来年2019年から順に完成していく。
円山地区はじめ中央区の西側地域は、マンション高騰化により札幌市民の収入では手が出なくなっており、郊外に目が向けられる傾向が強まっているが、苗穂駅やファクトリー横の新タワーマンションであれば、まだ札幌市民にも手の届く範囲になりそうだ。
東京の感覚で言えば、全くのお手頃価格であることは間違いない。
❺日本ハムファイターズ新球場で新駅誕生?
札幌ドームを本拠地としていた日本ハムファイターズが、別の新球場(ボールパーク構想)を北広島市のきたひろしま総合運動公園の場所に建設することが3月に決定した。
この場所はJR北広島駅から少し距離があるため、北広島駅より1.5km札幌駅寄りに新しい駅をつくれないか検討されている。
ボールパークの開業が2023年の予定で、新駅ができたとしても開業に間に合うかどうか?と言われているので、だいぶ先の話ではあるが、JR線にとっては活性化へ良い話であろう。
最後に/札幌移住なら失敗後悔の確率は低い
北海道移住において、失敗しない計画づくりのために、このブログを立ち上げた訳ですが、まず無難なのは札幌への移住であり、地下鉄沿線駅から徒歩5分以内の分譲マンションに引越しするのが無難です。
しかし、この記事で取り上げてきたJR線沿線も、新札幌や琴似のような地下鉄と複線利用できる駅以外にも、既に発展してきた「桑園」駅の他に、今回ご紹介した「苗穂」駅など期待できるところもあります。
但し、整備不良や雪の影響による遅延などは、今後も無くなる見込みは低いため、まだまだ地下鉄沿線もしくは市電(路面電車)沿線よりも不利な状況です。
今回の結論としては、リタイア組の方などで毎日交通機関を利用して出かける必要のない方には、苗穂や新札幌・桑園・琴似などはおすすめではないか!といったところです。
<出典・参考・参照元>
札幌市公式ホームページ – City of Sapporo
httpss://www.city.sapporo.jp/
市営交通/札幌市交通局
httpss://www.city.sapporo.jp/st/
JR北海道- Hokkaido Railway Company
httpss://www.jrhokkaido.co.jp/